『笑ってよ ゲロ子ちゃん 殉情編』ロングラン公演


CAワークス一宮スタジオがオープンしてから1か月がたちました。器はできた。次は中身です。まずは一宮の人に「本町商店街に演劇公演のできるスタジオがある」ことを認知してもらわないと。で、考えたのが、『ゲロ子』のロングラン公演です。来年3月まで毎月1回ずつ公演します。パンパンに入れても30人が関の山の小劇場です。口コミで、面白いから観に行ってみなよ、って形でお客さんが入ってくれるといいな。

以下、公演のたびに配るパンフレットに寄せた文章です。私の芝居観がこれでもかってくらい書いてあります。『ゲロ子』は、本当にこういう芝居だから、みなさん一宮スタジオに足を運んでください。演出の私は、もちろん公演のたびにスタジオにいます。みなさんとお会いできるのを楽しみにしています。 


           人間をしゃぶりつくす芝居

私ね、芝居は人間を見せるもんだと思ってるんです。みんないろんな面があるでしょ。ずるい所や、汚らし  い心根だって持ってるでしょ。そうかと思うと、溺れた犬を救おうと川に飛び込んで、犬は救かったけど、替わりに溺れ死んじゃったみたいな、無私の心っていうかな、そういう崇高な面だって持ってるでしょ。みんなそう。人間ってきっと割り切れない色んな面を持ってる。私はね、そういう人間の奥深さ、っていうかな、不気味さっていうかな、「業」の深さっていうかな、そういうものを描きたいんです、舞台の上でね。芝居の中で人間をしゃぶりつくしたいって言ったらいいかもしれません。それが私のやりたい芝居です。たかだか一時間半の芝居です。しゃぶりつくせる人間の数は、たかが知れています。だから、私の芝居、登場人物が少ないんです。この芝居も二人こっきりです。

 そんなわけですから、私の芝居に出るのは、役者にとっては、それはそれは辛い経験です。人間誰だっていい顔したいじゃないですか。カッコだってつけたいじゃないですか。うぬぼれていたいし、自分の中の汚い部分や弱い心根を直視したくないじゃないですか。でも私、役者にそれ、要求しますから。繰り返しになるけど、私はね、役者という人間を全部しゃぶりつくすつもりで台本書いているし、演出しているんです。さあ、アンタの心根、全部見せてくれ、ってね。もっと冷酷に、もっと優しく、もっと狂って!オラぁ、アンタの全部が見たいんだよ、ってね。そんな要求に応えてくれる役者は、僕にとっては、超人、なんです。だって普通の人間は、そんな大きな心の振幅、出せませんもん。もしかしたら、というか確実に、日常生活を送っているうちに心の振幅自体、知らず知らずのうちに小っちゃくなっていくんじゃないですか。そうしないと平和な社会生活送れないですから。その点、子どもはまだ、心の振幅、あるよね。天使のような笑顔で笑ったり、声が枯れるまで泣き続けたり、かと思うと大人がぞっとするほど冷酷な顔を見せたり。いつからだろうね、私らが心の

振幅を押し殺してしまうのは・・・。今回の二人の役者、いいですよ。心の振幅、大きいし、それをきちんと表現する勇気も持ってるから。是非、井口・清水という二人の人間を、業の深さを観てやってください。

 一宮スタジオの記念すべきオープニングにこの芝居をかけるのは、私にとって、とても意味があるんです。この小さなスタジオは、こういう芝居を創っていくんだぞ、という私なりの宣言なんです。人間をしゃぶりつくす、描きつくす。お客さんがほんのすぐ目の前にいる、ごまかしの効かない空間で、役者という人間を、人間だけを見せる。

人間というものを、本当の意味で愛おしむような芝居が、このスタジオからたくさん生まれますように。そんな願いを込めた作品です。是非、ご覧になってください。


(付記)この芝居は、今後、来年三月まで、月に1回のペースでロングラン公演をおこないます。会場も一宮スタジオだけでなく、いろんな場所でやろうと考えています。このスタジオの性格、目指すものをもっとも端的にわかってもらうには、この芝居を観てもらうのが一番だと考えるからです。