飼い主さんに会いたい

 きっともうすぐ梅雨が明ける。日差しがきつくなってきたから。雨よりも夏の太陽のほうがノラにはつらい。お店から出てくるクーラーにあたったり、日陰を探してヨコになったりしてる。

 この頃飼い主さんの夢ばかり見る。ボクの犬小屋。入り口にボクの名前がちゃんと書いてある。三角屋根の犬小屋。ボクが居ていい場所が、ボクにはあった。アタマを撫でてくれる飼い主さんの手のひらの感触。あんまりゴシゴシ撫でたら痛いよ。でも気持ちいい。お散歩。毎日夕方になるのが楽しみだった。雨でも、暑い真夏でも、いつも決まった路を飼い主さんといっしょに歩いた。ごはん。今日もドックフード?もう飽きちゃったよ。毎日決まった時間にごはんをくれた。そして、飼い主さんの声。おすわり!お手!嬉しいことも、悲しいこともボクにはいっぱい話してくれた。ボク、ちゃんと全部聴いてたよ。飼い主さんの、優しい声・・・。

 寝言言って、自分の声にびっくりして目が覚める。よだれと涙で顔がグチャグチャになってる。夢から覚めるといつも思うんだ。ボク、何か悪いことしたのかな?捨てられるような悪いこと、ボク、何かしたのかな、って。

 一度だけ、理事長さんに相談したことがある。理事長さんは真剣にボクの話を聴いてくれた。「犬なんだな、おまえ」理事長さんは言った。「犬には自由は荷が重いのかもしれんな」って。

 自由?今のボクが自由なら、自由ってさみしいもんなんだな。今のボクが自由っていうのなら、ボク、自由なんて要らない!・・・飼い主さんに会いたい。