出会い

 ボクは捨てられた。刈谷東高校の横を流れる猿渡川の橋の下に。「ごめんね」ボクのアタマをなでながら飼い主さんは言うと、一度も振り向かずに土手を駆け上がっていった。ボクは捨てられた。飼い主さんに捨てられた。そう思ったら、涙が止まらなくなった。

 どれくらい経っただろう。「なあ」と知らない人の声がした。目を上げると、真っ黒な服を着てサングラスをかけた男の人が、しゃがみこんでボクの顔を覗き込んでいた。手には吸いかけの煙草を持っている。この人、犬のボクに話しかけてる!「おまえ、ワークショップに参加しな」サングラスの人はそう言って、ボクのアタマをひと撫でした。ワークショップ?何それ?それにボク、犬だよ。しかも捨てられた、要らない犬なんだよ。

 「大丈夫だ。オレのワークはさ、言葉使わないんだよ。だからおまえみたいな犬でも参加できるんだよ。オレ、言葉なんて信用してないからね。口じゃあ何とでも言えるもんなあ。自分の都合でペット捨てといて、ごめんね、とかさ」この人、見てたのか・・・。

 「さ、行くぞ」サングラスの人は立ち上がって煙草をもみ消すと、一人で土手を上りはじめた。

 ボクはどうしていいかわからなかった。ここで待ってたら、飼い主さんがまた迎えに来てくれるかもしれないし・・・。

 「まだわからねえのか!」男の人の声がした。土手の途中で振り返ってボクを見てる。「おまえは捨てられたんだよ。いい加減一人で生きてく覚悟を決めたらどうだ」


 これが理事長さんとボクの出会いだ。その夜、ボクは生まれてはじめてワークショップに参加した。(つづく)